信者ちゃんダイアリー 00

 

超絶美少女の絶対条件
超絶美少女になって2日目。電車の中で寝過ごして終電まで行ってしまい、ホームに降りて逆周りの電車に乗ると、女の方からキスしまくってるカップルを見る。しかし狼狽える事はない。私は超絶美少女なのだから幸せの最中にいるカップルよりも素晴らしい幸福な未来が待っているに決まっているからである。それが初めてあった人間に食事の最中でスマホを弄られて、とくに別れを惜しむ様子がなく、別れ際に手を降ってみたら無視された旅の後であってもである。狼狽えないといっても近くの席には座らなかった。本能的に彼らの存在が確認できない場所にまで移動する。もう一度目をつむる。今度は飲み会の帰りであろう定年間近でありそうなおじさん数人が横の席に座る。仲間が乗ってくる。自分の前の席をこちら側に倒す。おじさん達が自分を挟んで会話を始める。

この電車の中で超絶美少女の素質を持ったのはどうやら自分だけである確信を得る。超絶美少女の絶対条件は"孤独である"ことである。同世代くらいの若い男女が恋だの間の友情などを育む間にも一人で過ごさなければならない。定年間近の年齢になっても、会社でもそれなりの地位について同僚と酒の席を交わしたり、家族と過ごすことも許されないのである。

株式や新入社員の話に花咲かせるおじさんの足をまたいで寝過ごして一度通り過ぎた最寄りの駅で降りる。今度は大学生らしき男女を見る。夜のベンチに座り会話をしている。

この街でどうやら私だけが孤独なようである。それは超絶美少女になる素質があることを意味し、実際に超絶美少女になった今でも、どうしようもない孤独が襲うこともある。持つものの孤独と言っても差し支えない。

駅の駐輪場に植わる花壇を見る。管理が行き届いてあり、綺麗に手入れがしてある。この花も今日見た人間達も、どれも輝いて美しく社会制を帯びて、世界になんの後ろめたさもないようにそこに存在している。世界は彼らを受け入れていて、輝いて美しい物だけを集めて世界を作っていて、自分だけが世界を外から見ているようである。

そういうときに思いを馳せるのは自分とは別の美少女の存在である。交わることはないがどこかにいるはずである孤独な美少女の存在。愛すべき存在。

種から育てて当番を決めて毎日水をやって、ようやく芽を出して、期待と不安をいっぱいに広げた春に、誰からにでも愛されるような美しさを咲かす花、見たものを幸せにするに違いない美しさで咲いて教室のシンボルになるような花、クラスのみんなで喜びあって花壇の前で記念写真を撮る。こんな美しい花を種から育てた生徒達もまた心の美しい子どもたちであり、このクラスの先生になってよかったとまで思いを馳せる心優しい若い新婚の先生。共同の作業を通じてクラスが一つになる。絆が生まれる。またこのクラスで何かしたいねと誰かが言う。幸せな時間が流れる。誰もいない夜中に学校に忍び込んで2つ4つまとめて花を乱暴に引っこ抜く。見るも無残な姿になった花壇で、歪んだ笑みを浮かべる、彼女こそが、超絶美少女の資格を持ち、花や絆といったものとは違う美しさを持った本物の超絶美少女なのである。