100m走

信者ちゃん「……というわけでね私は国王になったんだよ。」
「うん。信者ちゃんは才能があるよ。
 信者ちゃんは、"特別"だからね。高校の先生も言ってたよ。」
じゃあ私は大学があるから。と言って彼女は帰っていった。
私はやっぱり高校生の頃から特別な存在だったんだ。
私は19歳になった。

 


私と彼女は高校1年の吹奏楽部で知り合った。
彼女は私が最初に出来た友達。だからトモちゃん。本当の名前は忘れてしまった。
入部して4日目の金曜日。私がトモちゃんと準備室から部活用の演奏器具を運んでいた所に、部内でもあまり目立ってない同じ一年の眉の太い女の子が来て、彼女も機材を運ぶ様子だった。
私達は、高校の1年生にしては重すぎる機材をなんとか2人で運びきって、一息ついていた所に、準備室から鈍い音が聞こえてきた。
機材をぶつけたんだろうかと思っていると、更に激しい音が聞こえてきた。ゴン、ゴン、ゴン。更には物を蹴るような音がして、更には怒号のようなものまで聞こえてきて、あまりのことに、私達が固まっていると、さっきの眉毛の彼女が出てきた。


眉毛は、泣いていた。
眉毛はブツブツと怒りながら泣いていて、速歩きで、教室を出ていってしまった。
どうやら、眉毛は2人でようやく運べる機材を、一人で運ぼうとして、準備室の扉に引っ掛けて、そのストレスで、怒り、泣き、物に奴当たりをしていたらしかった。
それから、眉毛は一度も部活に来るどころか、学校でも見なくなっていった。

 


信者ちゃん「久しぶり。髪の毛、染めたんだね。」
「それに、眉毛も沿ったよね。私は今のが良いと思うけど。」
信者ちゃん「うん、染めた。大学、楽しいの?」
「楽しいよ。先輩も優しいし、面白い人ばかりで、こないだもサークルで飲み会で飲みすぎて吐いちゃったんだよね。」
信者ちゃん「私達、19歳だよ?」
彼女は私が見たことない豪快な笑いをして、信者ちゃんって変なとこで真面目だよね~と言った。
私は黙っていた。
「……もしかして、怒ってる?」
私は彼女にイラついていた。

 


眉毛を発見したのは2年の体育祭の時だった。
私は、すっかり教室で孤立していた。
体育祭は、一人が一科目は絶対に出場しなくてはいけなく、高校生にもなると目立ってやろうというよりかは、いかに恥をかかないが主流になっていって、一人一人の恥が少ない、団体競技が人気だった。
私は力の差がハッキリするので避けられていた、100m走を押し付けられる形で就任していた。
『次はひまわり組です。』
眉毛が現れた。
眉毛は他のひまわり組を置いてけぼりにする速さでゴールに駆け抜けていった。


そのままの勢いで眉毛は私の目の前に近付いてきて、
大山のぶ代の後を継ぐのは私とあなただ!!!!!!!!」と叫んだ!

 

 

トモちゃんから さようなら とLINEのメッセージが届いた。

それからトモちゃんと二度と会うことはなくなっていた。

 

 

私は100mのトラックを誰よりもはやく一番に駆け抜けていった。